PERFECT WORLD

GOTH―リストカット事件

GOTH―リストカット事件

もう大分前に読んだ本なので(またかよ、でも先月)簡単に・・。
この本を図書館で見て思わず借りてしまった。
確か数年前にベストセラーかなんかのミステリーの賞をとったかよく知らないんですが(ひでぇ)、とにかく話題になった本だという事は知っていた。
ようするに主人公がサイコでダークなキャラで周囲で異常犯罪が起きる話なんだな。
あぁだから話題になったのか・・・と多少斜っぱな気分で読んでいたら・・
やられた、マジやられた・・。
一応ミステリーなのでネタバレというか本文丸写しの文章があるので隠し。


2章の「リストカット事件」である。

ただでさえ、手とか冷蔵庫と言う触媒にやられた感じがするのに。
ヲレは、学生の時なんでもいいから写真を撮ってこいというの課題で、実習室の冷蔵庫の中にいつも履いているあんぱんまんのスリッパを入れた写真を出した経験があります。
本当はぬいぐるみを入れたかったんだけど、もってなかった。
自分でも良くわかんないんですが、どうも自分は食料品が入っている筈の冷蔵庫に全く関係のないものがいるというシチュエーションが好きらしい。
あと冷蔵庫と言う真っ白な無機的な冷たい物体と命ある(あったもしくはあると思い起こす*1有機物との対比も。
しかも人間の身体の部分で一番表情があって色っぽいのは手だと思っています、んでもって少し手フェチっけがある。
もうそんな人間なんで冷蔵庫に手があるとあったら、ぞくぞくします。(もちろんホラー的にも)
いや、本当にあったらマジで気持ち悪いですよ、見たら吐くと思います。
さらに念の為添付、小説の世界だからで自分の中でグロくなく描写されているからですよ、文体もクールでさっぱりしているし。
また、森野のヒーロー役ですか?と思っていたらどんでん返しで実は犯人に森野を襲わせるためだったと言うストーリーもすごいし(そうでなければ、まぁ流れ的におかしいんですが)
理由が

僕が森野の手を欲しいと思ったのは、自殺しようとしたことを示すリストカットの美しい傷跡が手首に残っていたからだ

これがラストでページをめくってすぐに出てくるところに作者の意図を感じるぜ。
この文章があるからこそ、この話は完成する。
ジグソーパズルの最後の1ピースの如く、そこにあてはまってやっと世界が成立する。
その衝撃は電撃を受けて痺れるくらいに感じた。
理由の内容にか?と首をかしげながら、残りの話を読んで行く最中に気付いた。
強烈な欲望を感じたからだ。
主人公はクールだし、異常犯罪が好きと言うわりにそんなシーンに遭遇しても感情をほとんど出さない。
物語は1人称で書かれているのにほとんど感情の起伏がなく淡々と進んでいく。
そんな無機的にも感じる主人公が己の欲望をあますことなく、これで描かれてきっている。
ぶっちゃけ、この1文で前章はぶっとぶわ、後の話は頭真っ白状態で読んでいました。
だから残りの話はあまり覚えていない。
たった1文でここまで衝撃受けたのは初めてでした。
コレほどではないのは結構あるけど。*2

*1: (ぬいぐるみや人形など) 

*2:山田詠美とか森博嗣とか。前者はどきどきするとかで後者は魔法が解けたみたいにすっきりするか、かけられて眩暈を感じるとかそんな感じ。